傷が痛くないから重傷?なんで? |
「角膜に傷がいっぱい出来ていますよ」 「え、本当ですか?」 「本当です。痛くないのですか?」 「全く痛くないですが」 「これだけ傷があると、本当は痛いものなのですよ」 「という事は、まあ、割と軽いということですね。よかった」 「逆です。痛くないから重傷ですよ」 「そんなばかな。痛いほうが重傷でしょ」 「ある日突然こんな傷が出来たら、痛みで目を開けられませんよ」 「そうなんですか」 こういう会話が、河野眼科ではよく交わされます。 角膜に傷が出来ることがよくあります。 角膜表面は、タイルをビッシリ敷き詰めたように、角膜上皮細胞で覆われています。それがポロリポロリと剥がれ落ちると、眼科医の言う「傷」になります。 傷が出来る原因は様々です。 ・コンタクトレンズによるもの ・角膜の乾燥 ・結膜炎によるもの ・角膜の部分的な酸欠状態 ・さかまつげが角膜表面をこする 等々、ほかにもあると思います。 このような状態が急に起こり角膜に傷が出来たら、敏感な角膜はものすごく痛いのです。ところが、長期間かかって徐々に傷が増えてきた場合は、痛みをあまり感じません。それは、角膜が慣らされてしまって鈍感になるからです。別の言い方をすれば、角膜の知覚が麻痺してしまったということなのです。 それでも、痛くないほうが良いじゃないかと考える人もいるでしょうが、本当にそうでしょうか。ちょっと想像してみてください。「あれ、けがをしたのに痛くないぞ」「傷が治らずにずっとジクジクしているのに痛くない」というような状況は何か変ですよね。 傷があるのに痛くない場合、知覚の麻痺した部分は、感染を起こしやすい状態になっています。痛みが無いから、治ったと勘違いして治療を中断する事も多く、そのせいでさらに重症化する事があります。また、長期間かかってじわじわと悪くなっているので、治るのにも時間がかかります。 現在通院中の患者さんの例です。何年か前から白内障の点眼と合わせて傷を治す点眼を続けていました。痛みは全くありませんでした。1年ぐらい続けたある日、目が痛くなったと来院されました。1年間、全く変わり映えしなかった角膜の傷が、少し減少していました。 「角膜の感覚が戻ってきたのかもしれません。しばらく我慢して目薬を続けてください」 と説明し、同じ治療を続けました。痛みは徐々に治まり、2ヶ月程度で傷はほとんど無くなりました。知覚が回復した事で、傷の治りも加速したと考えています。この方の場合、痛みが回復のサインだったようです。 ★ご質問は河野眼科ホームページから |
by kounoganka
| 2006-06-24 10:56
| 角膜・結膜
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