子供の乱視の矯正 |
Q 息子は、3歳半検診で左目の視力が0.5無いということで、眼科受診を勧められました。そこで遠視と乱視があると診断され、サイプレシン点眼後、R +1.75 cyl 1.50L +1.75 cyl 2.0視力検査では、RV=0.5(0.6 +2.0 -cyl 1.0 A180)LV=0.3(0.5 +1.5 -cyl 1.0 A180) で半年後まで経過観察ということでした。半年後の検査では点眼無しの視力検査のみで、RV=0.8(1.0 +1.0 -cyl 0.75 A180)LV=0.6(1.0 +1.25 -cyl 1.50 A180) でした。 しかしこの3ヵ月後に引越しがあり、主治医を変えることになってしまいました。ここでは詳しいデータはいただけませんでしたが、視力はR=0.9(矯正視力1.0)、左=0.6(矯正視力1.0)で、できるだけ早く眼鏡をかけてあげてくださいと言われました。それも、見えにくい時だけでなく、できるだけ長い間(常時?)ということでした。弱視でもなく、今後不同視になる心配があるわけでもないけれど、今後の発達に影響するからということでした。乱視もありますし、いずれ勉強などを始めたら、手元を見るときに眼鏡は必要となるのでしょうが、やはり今から、常時かけなければならないものなのでしょうか。もし、そうしなかった場合、発達への影響とは弱視以外にどんなものが考えられるのでしょうか。 また、眼鏡を作成するにあたって、気になることがあるのですが、引越し前の先生は、遠視+近視性乱視と診断され、遠視用の球面レンズと近視用の円柱レンズを組み合わせた矯正視力を最良視力(左右とも1.0)とされていたみたいです。(乱視に遠視性と近視性があることは後になって知りました。)しかし引越し後の先生は、改めて点眼後の機械計測を行い、遠視+遠視性乱視と診断されました。しかし実際に息子が遠視用レンズと遠視性乱視用レンズを着用すると、すごく見えにくいと言い、じっさいに測定値もガタンと落ちました。日を改めて、今度は遠視用レンズを外し、遠視性乱視用レンズ単独にすると、遠視用レンズ+近視性乱視用レンズの時と同様に左右とも1.0出たのです。最初の先生の診断が正しいとすると、機械計測値と矛盾することになりますが、後の先生の診断が正しいとすると、息子は実際は遠視はあまりなくて、単乱視に近いものだったということなのでしょうか。それともこのような矛盾はよくあることで、矯正視力さえ出ていればどちらの処方でも問題ないのでしょうか。嫌がる息子を説得して眼鏡をかけさせるのなら、正しい矯正ができるレンズを作りたいのです。困っていたときに、先生のブログを拝見しました。先生のご意見をお伺いできないでしょうか。長くなって申し訳ありません。どうぞよろしくお願いいたします。 A 現在は矯正視力が左右とも1.0ですので、「弱視」とまでは言えません。しかし、裸眼の場合には距離に拘わらず正確にピントが合いませんので、常にぼやけた世界を見ることになります。それによって矯正視力が十分に出なくなるかもしれません。将来も矯正1.0止まりになったりします。また、小さいうちから鮮明な像を見せてあげないと、将来正しく矯正した場合に「歪んで見える」と感じる事になります。 またこれは推論の域を出ませんが、常に鮮明でない世界を見ていると、精神的にも影響があるかもしれません。落ち着きが無くなるとか、切れやすくなるとかの可能性も否定できません。 まん丸の目には乱視は無いと思ってください。眼球が上下から挟まれたように少し平べったくなるのが乱視(正乱視)です。稀に倒乱視という縦長の状態もあります。乱視の目は、縦方向の光と横方向の光のピントの位置がずれるので、距離に拘わらずピントが合いません。縦方向の屈折度数と横方向の屈折度数が違うので、それを埋め合わせるレンズを使って矯正します。普通の直乱視の場合、平べったい目の形を埋め合わせるために、上下が分厚い乱視レンズを用います。そのレンズを目に貼り付けたら合わせて「まん丸」になると考えてください。普通にそのレンズを通して物を見ると上下の高さが縮んで見えます。 縦方向の屈折度数が近視で、横方向の屈折度数も近視の場合が近視性乱視です。 縦方向の屈折度数が遠視で、横方向の屈折度数も遠視の場合が遠視性乱視です。 縦方向の屈折度数が近視で、横方向の屈折度数が遠視の場合は雑性乱視または混合乱視と言います。 縦方向の屈折度数が遠視で、横方向の屈折度数が近視の場合も雑性乱視または混合乱視です。 遠視+遠視性乱視というような概念は眼科には有りません。測定するときにどのレンズを組み合わせるかということで、そのように表現する事は有るかもしれません。 そこでお子さんの目ですが サイプレジン点眼後にR +1.75 cyl 1.50 L +1.75 cyl 2.0というのは、Sを普通のレンズ、Cを乱視レンズ、+を凸レンズ、-を凹レンズと表記すると、 右 S+1.75D C-1.5DA180° 左 S+1.75D C-2.0DA180° であったと考えられます。左右とも遠視+近視性乱視に見えますねえ。しかしこれは 右眼は横方向に+1.75の屈折度数、縦方向に+0.25の屈折度数がある。つまり遠視性乱視です。 左目は横方向に+1.75の屈折度数、縦方向に-0.25の屈折度数がある。つまり雑性乱視です。 ということを意味します。 これを別の表記方法であらわすと 右 S+0.25D C+1.5DA90° 左 S-0.25D C+2.0DA90° となり、別の目のように見えますが全く同じものです。0.25という一番ゆるい球面レンズを無視すれば、乱視のテストレンズ1枚で矯正できます。同じ度数を表現するのに2種類のレンズの組み合わせがあるのです。 実際に視力を測定してみると、はじめの点眼後は RV=0.5(0.6 +2.0 -cyl 1.0 A180) 横+2.0、縦+1.0 LV=0.3(0.5 +1.5 -cyl 1.0 A180) 横+1.5、縦+0.5 半年後の平常の状態では、 RV=0.8(1.0 +1.0 -cyl 0.75 A180) 横+1.0、縦+0.25 LV=0.6(1.0 +1.25 -cyl 1.50 A180) 横+1.25、縦-0.25 はじめの点眼後は遠視性乱視、半年後の平常は雑性乱視でしょうか。遠視が弱くなっています。この変動は次に説明します。 2軒目の眼科では、乱視に加えて遠視が強く測定され、なおかつその度数では視力が下がり、遠視を緩めるとよく見えるということでしたね。1軒目の眼科でも上に書いたように同様の事は起こっています。人間の目は近くから遠くまでにピントを合わせることが出来ますが、近視の人は近くから有限距離まで、遠視の人はある程度近くから無限遠よりさらに遠くまでピントを合わせられます。この無限遠より遠くの部分は日常使われませんので完全に無視されてしまって、無限遠より遠くにピントが合うようなレンズで矯正すると十分な視力が出ないことがあります。これを仮性近視といいますが、このような場合は仮性近視は放置し、そのままの状態、つまり平常時によく見える眼鏡を使用してもらいます。遠視の度数を仮性近視の分だけ差し引いてゆるくすることによって、十分な遠方視力を出します。 実際に処方される眼鏡は、適切な乱視矯正をして、さらに遠方視力が低下しない程度に遠視度数(状況によって近視度数)を加えます。それだけです。結局、どちらの眼科で処方してもらっても、よく見える眼鏡はほぼ同じになります。 (今回の話は、眼科医か視能訓練士にしか理解できないかもしれません。眼科研修1年の眼科医でも理解していなかったという経験がありますので。) ★ご質問は河野眼科ホームページから |
by kounoganka
| 2009-11-16 16:54
| 視力・斜視
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